サービス レベル管理

サービス レベル契約（SLA）は、顧客とITサービス プロバイダー間の契約です。両方の当事者にサービスから得られる期待事項を提示します。基本的には、クライアントに対して特定のサービス レベルを約束する契約であり、具体的で測定可能な最小サービスを提供することと引き換えに支払いを受けるものです。契約は法的拘束力がある場合もあれば、非公式な場合もありますが、いずれにしても、サービス プロバイダーが契約の終了を支持することが期待されます。

SLAには3つの異なるタイプがあり、それらはすべてSLA管理と呼ばれるプロセスを通じて設計、交渉されます。SLAの具体的な内容は、契約の種類とそれぞれの場合に提供されるサービスによって異なります。しかし、通常たいていのSLAに含まれるコンポーネントは次のとおりです。

• サービスの契約範囲に関する詳細情報。これには、サービス プロバイダーの保証、優先順位、責任についての詳細が含まれます。
• 提供されるサービスの追跡とレポートに関するガイドライン。
• 問題管理と災害復旧の手順。 
• 顧客の義務に関する情報。 
• 提供されるサービスの料金と費用の詳細、SLA終了に関する条項。 

SLAは不変でないという点を覚えておくのは大切です。サービス レベル管理の主要な要素には、サービスの変更または更新に続くSLAのレビューと改訂が含まれます。導入しているSLAのタイプによっては、更新に際して、他のタイプとは異なる費用が発生する場合があります。

SLAを導入すると、顧客とITサービス プロバイダー両方の期待事項が明確に記録されているため、当事者間の関係がスムーズに進みます。 

SLAには、サービス レベルSLA、顧客ベースSLA、マルチレベルSLAの3種類があります。IT SLA管理の重要な要素の1つは、具体的なニーズと提供されるサービスに最もふさわしいタイプの契約を考慮することです。必要なSLAを決定するための最初のステップは、3つの異なるタイプを理解することです。

1. サービス レベルSLA - このタイプのSLAでは、すべての顧客に対して同一レベルのサービスを提供します。このシナリオでは、すべての顧客が同じレベルのサービスを受けます。サービス レベルSLAの例としては、モバイル サービス プロバイダーが提供する契約があります。プロバイダーの顧客全員が、サービスにおいて、同じレベルの保守と保証を同じコストで受けられます。
2. 顧客ベースSLA - SLAの2番目のタイプは、基本的にサービス レベルSLAの逆です。サービス レベルSLAは、大規模な顧客グループに、約束した同一のサービスを提供しますが、顧客ベースSLAの場合、1人の顧客または1つの顧客グループに対して、約束した複数のサービスを提供します。たとえば、顧客ベースSLAには、大規模な組織の財務部門とITサービス プロバイダーとの間の契約が含まれる場合があります。サービス プロバイダーは財務部門にさまざまなサービスを提供しますが、顧客ベースSLAでは、その顧客に対して全サービスをカバーする1つの契約を結ぶことができます。
3. マルチレベルSLA - SLAの最後のタイプは、同じサービスを、さまざまな顧客のセットに対応するよう、複数のレベルに分けて契約します。各顧客は、製品上のサービスが保証されていますが、提供されるサービスの具体的な内容やレベルは顧客ごとに異なります。マルチレベルSLAでは、これらのさまざまな仕様がすべて1つのSLAに含まれます。 

SLAの目的は、当事者両方を保護するための合意を結ぶことです。約束されたサービスの提供を保証するための明確で事前に決定されたフレームワークのおかげで、ビジネスをスムーズに運営できるようにすることを目的としています。サービス レベル管理の主な要素の1つであるSLA監視には、保証されたレベルのサービスが、サービス プロバイダーにより提供されているかを確認することが含まれます。

SLAが顧客とサービス プロバイダーの両方を保護するという目的を達成できるようにするには、いくつかの重要な要素が含まれている必要があります。要素： 

• サービスの種類に必要に応じて、提供されるサービスの種類をできるだけ詳細に具体化する必要があります。
• サービスに必要な（および期待される）レベルのパフォーマンスが含まれている必要があります。サービスに期待されている応答性と信頼性に対して特に注意が払われている必要があります。 
• パフォーマンスのレベル監視および管理する方法を設定する必要があります。これには通常、収集される統計のタイプや、顧客がその統計を評価する頻度および方法を決めておくことが含まれます。 
• サービスの問題をレポートするための手順を備えている必要があります。これには、問題報告を処理する担当者の詳細と、詳細を報告する順序が含まれます。SLAには、問題を調査して解決する時期も含まれている必要があります。 
• SLAが定めたコミットメントを満たしていない場合における、サービス プロバイダーへの影響を含めておく必要があります。これらの影響には、サービス不良の結果として発生した損失の払い戻しを顧客が要求できるという点を含みます。また、契約を終了する権利を顧客が有するという点も含まれます。

SLA管理は、サービス レベル管理とも呼ばれ、実際のサービス パフォーマンスをSLAが示すパフォーマンスの事前定義された期待値と比較するプロセスです。この一環として、SLA管理には、SLAを作成し、必要に応じてサービスと顧客のニーズを更新して改訂することも含まれます。 

SLA管理は、サービス レベル合意プロセスのすべてのステップを監視し、それに関与します。これは、サービス パフォーマンスに期待されるレベルを定義し、SLA内でそれらを文書化するのに役立ちます。パフォーマンス統計を測定およびレポートし、サービス プロバイダーがその義務を果たしているかどうかを判断することにより、効果的なSLA監視を導きます。

SLAが満たされていることを確認するだけでなく、SLA管理は顧客満足度の監視も行えるため、ITサービス プロバイダーは、競合他社と比較して顧客に価値を提供できているか確認できます。顧客満足度は、SLAが確実に施行されているかなど、サービス レベル管理の他の要素と密接に関連している場合が多くあります。SLA管理は、サービス プロバイダーが顧客の期待に応えているか、期待を上回っているかを確認するうえで役立ちます。 

SLA管理は、SLAを作成するためのフレームワークを提供し、提供または受けるサービスの品質がSLAで合意されたものと一致するかどうかを確認できるため重要です。

SLAがなければ、サービス プロバイダーと顧客のどちらかが取引終了を延期しなかった場合に、どうなるのかが明確にはなりません。つまり、約束どおりにいかなかった場合、どちらの当事者も保護されません。SLAに法的拘束力があるかどうかにかかわらず、SLAは両当事者の期待事項を書面で提示しているため重要となります。したがって、だれかが期待事項を疑問に思うことはありません。

SLAがあれば、顧客にとっても自社にとっても、透明性と確実性を実現できます。SLA管理により、時間を無駄にすることなく、顧客が期待するサービス品質を判断し、当事者両方がサービスに対して同じ期待を抱いていることを確認できます。

SLA管理は、サービス パフォーマンスに関連した顧客の懸念事項を監視できるという点でも重要です。サービス レベル管理を支援するソフトウェア ツールがあれば、パフォーマンスの問題に関係したチケットを全部まとめて確認できるので、顧客満足度と全体的なサービス パフォーマンスをより適切に監視できます。

まだ知らないサービスに何を期待できるのか心配することなく、ビジネスを円滑に運営できるという点で、SLA管理は大切です。

サービス レベル管理ソフトウェアは、組織がベンダーから受けるサービスのレベルや、顧客や従業員に提供するサービスのレベルを管理・監視するのに役立ちます。サービス レベル管理は、合意されたサービス レベルを定義し、追跡し、確実に達成することを含みます。そして、SLA管理ソフトウェアはこのプロセス全体を簡素化します。

SLA管理ソフトウェアを最大限に活用するためには、SLAを定義する必要があります。さまざまなサービスに対して事前に許容可能なパフォーマンス メトリックとターゲットを設定することで、すべてのチケットに適切な期間内に対応し、解決することを確実にできます。これらのSLAは、応答時間、解決時間、稼働時間、可用性などの側面をカバーすることがあります。

SLAを定義した後、ソフトウェアはシステム、アプリケーション、ネットワークから関連する指標を継続的に監視および測定し、期待通りにパフォーマンスが発揮されていることを確認できます。ソフトウェアがSLA違反や潜在的な違反を検出した場合、チームに通知することができます。一部のソリューションはメールに依存しており、他のソリューションはSMSメッセージやダッシュボード通知を送信します。

多くのSLA追跡システムは、時間をかけて収集されたデータを集計し、履歴記録を提供します。これにより、貴重な知見を得ることができる場合があります。例えば、繰り返し発生する問題をよりよく理解し、傾向を特定できます。もしチームが定期的にSLAを達成できていない場合、エージェントが過負荷になっているサインかもしれません。この場合、チケットをうまく回避する方法を改善するか、負担を分担するためにチーム メンバーを増やす必要があります。時間をかけて収集されたデータへのアクセスは、改善すべき領域を特定するのにも役立ちます。例えば、現在のプロセスの1つが期待通りに効果的でないことに気づいたり、技術の更新が必要だったり、リソースの割り当て方法を変更する必要がある場合があります。

一部のIT SLA管理ソフトウェア ソリューションは、SLAパフォーマンスが特定のしきい値を超えた場合、自動的に対応を行うこともあります。例えば、応答時間がSLAの制限を超えた場合、自動的にエスカレーション プロセスが開始され、Service Desk SLAチームの時間と労力を節約できます。

ITサービス レベル管理ツールは、必要なSLMソフトウェアの機能を提供できます。例えば、SolarWindsのサービス レベル管理は、ITサービス管理（ITSM）ソリューションであるService Desk内の機能です。

全体として、サービス レベル管理ツールは、パフォーマンスに関するリアルタイムの洞察を提供することにより、組織が高いサービス基準を維持するのに役立ちます。これにより、チケットを適切に優先順位付けし、SLA違反を防止するための行動を取ることができ、関係者全員にとってより良い体験を提供します。